3. アンディ・マレーのバックハンド強打

マレーのバックハンドはきれいなフォームをしており、威力を出すのに適したフォームをしています。リターンでは、右肩をしっかりと入れ、前に踏み込みながら、スウィングを開始します。右肩をしっかりと入れた時点で、この形を作れていれば、どんなボールが来ても、打ち返すことができるという構えができています。ラケットの面作りがうまく、ボールに合わせて打ち返すのが上手い。

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基本はカウンタータイプです。マレーのフォアハンドは多少力みが見られるシーンがありますが、バックハンドでは力むことが少なく、柔らかさがあります。体重移動、身体の回転、スウィングがスムーズで全てバランスよく使っています。テイクバックで右肩をぐっと入れ、左肩よりも右肩を下げて体重を前に乗せたスウィングしてます。テイクバックでは、さらに腰をかなり入れ、上半身のひねりをうまく使います。高い打点の強打がうまく、特に、高い打点からアングルのクロスに強打するのが得意です。5,6年前のナダルと戦うときは、ナダルのヘビートップスピンをバックハンドの高い打点でアングルに打ち抜いてナダルを圧倒していました。スウィングスピードを加速させるのがうまく、腕力に頼らず、球速を上げることができますので、アンフォースドエラーが少ないです。サイドに厳しいボールを打たれたときでも、うまく軸足を外に飛ばしながら打つことができ、コートカバーリングも優れています。パッシングもうまいです。ミスなく強打し続けられる技術に長けています。相手がバックハンド側に打った強打に対する返球もうまく、合わせて打つこともできます。強打を強打で返す場面も多いが、マレーにとっては強打しているつもりはない。相手のボールに負けない強い支えを作ることができます。
バックハンドのストレートへの強打で、サイドアウトする場面があります。マレーは身体の疲労の影響がモロにショットに出る場面も多い。常に全力で立ち向かうタイプなため、メンタル的な器用さはそれほど持ち合わせていない。以前は、攻めが遅くミス待ちテニスをするため勝ち切れなかったり、自分より上位の選手に勝つことも少なかったが、今は攻め中心のテニスをするようになっています。セカンドサーブを狙われることも多く、サービスキープが少し課題だが、相手のサービスをブレイクする場面も多い。強打もできるし、アンフォースドエラーも少ない。足が速いからコートカバーリング能力も高い。今後は、より変化をつけたプレーも必要だろう。バックハンドの高い打点のアングルへの強打をもっと見たい。打てるはずだが打たない。そこまでして無理やりエースを狙う必要がないからかもしれないが、さらに勝率を上げるためには必要だろう。ジョコビッチとは幼いころからのライバルでこれまで何度も戦ってきた。今後の戦いにも期待したい。


<違う角度から見たマレーのバックハンドストローク>

5. 錦織圭のバックハンド強打

錦織圭のバックハンドはコントロール能力が抜群に高い。錦織のバックハンドのコントロール能力の高さの秘訣は、身体と腰の回転を抑え気味で打つことにある。また、リストをよく使うのも錦織の特徴である。手首をよく曲げ、インパクトにむけて、インパクト直前で一気に手首を返すようにして、スウィングスピードを加速させていく。また、錦織圭はバックハンドストロークで、ボールを合わせてラケット面を作って打つのが上手い。トップ選手なら皆、ボールに合わせる技術は高いが、錦織ほど自然体でこなせる選手はいない。フェデラーが両手バックハンドだったら、おそらくそういう打ち方をするだろう。錦織のバックハンドは安定感が抜群に高い。ラリー戦におけるバックハンドの打ち合いでは、ライジングでストレートに流しつつ、エースを取ることもできます。また、深いボールを後ろに下がりながらでも、強打できるのは錦織の技術の高さを表しています。ストレートへの強打も上手い。狙い澄ましたストレートへの強打は対戦相手が分かっていても、取れない。ベースラインの内側に入って一歩前に踏み込んで強打するから、相手はディフェンスにまわる暇がない。速いタミングがうまいから、カウンターもうまい。ライジング気味にショートクロスに打つのも得意で、パッシングでよく使います。特に、リターンはうまい。テイクバックが非常に小さく、フォロースルーを全くせず、インパクトにラケット面をセットし、ライジングでさばく。アドバンテージサイドで、バックハンド側に来たボールをストレートに強打することができます。

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バックハンドでの打ち合いでは、ジョコビッチと並ぶ技術力の高さがあります。ジョコビッチと異なるのはストレートへの強打の頻度です。錦織は、打てばエースになるときにしか打ち込みません。しっかり肩を入れて踏み込み、自分の打点に入れたときしか打たない。相手のショットにスキがあるときのみに打ちます。ジョコビッチは、相手のボールに威力があろうと、ストレートに打ち込みます。錦織は、今後、様々なシチュエーションでも、ストレートに強打できるようになるのも課題だろう。
また、今後は、さらに球速のあるボールを打つ必要があるだろう。厚い当たりで、今よりスピンをかけたスピードボールを打つ必要があります。今の試合展開よりもウィナー数を増やし、相手をベースラインの後ろに下げる必要があるだろう。錦織のバックハンドのコントロール能力の高さの秘訣は、身体と腰の回転を抑え気味で打つことにあるが、今後さらなるレベルアップを図るためには、体幹を含めて全身を使った強打をする必要がある。リストをよく使うことでスウィングスピードは上がり回転をかけられるが、ボールの重さはそれほど重くならず、相手のミスを誘うほど脅威にならない。


違う角度から見た錦織圭のバックハンドストローク強打

6. トマーシュ・ベルディヒのバックハンド強打

ベルディヒのバックハンドは、お手本のようなフラット系バックハンドです。ミスが少なく、しかもスピードがあります。ただ、早いタイミングで打って攻撃的なプレーをするようなことはしません。あくまで最大の武器であるフォアハンドを活かすためのショットです。テイクバックもフォロースルーもコンパクトで、「面」を作るのがうまく、合わせて打ち返しています。フットワークもよいため、コートカバーリングが優れている。遠く離れたボールは、軸足を外側に飛ばしながら打つ。打った後の戻りも速いです。しっかりと引きつけて打つオーソドックスなスタイルです。また、低いボールはしっかりと膝を曲げて打ちます。振り子のようなスウィングで、スウィングスピードに加速をつけます。バックハンドの丁寧さはトッププロの中で一番です。相手と真正面から勝負をし、正々堂々戦うという言い方がぴったりのプレースタイルです。

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基本を徹底しており、テイクバックが早く、相手のボールに負けることがありません。打点までしっかりと移動して、止まって打ちます。ストレート、クロスへの打ち分けもうまい。カウンターもうまい。アグレッシブに攻めることも少ない。クローズスタンス・オープンスタンス両方をこなします。両手バックハンドだが、高い打点で打ち込むシーンをあまり見かけない。特別スピン量が多いわけではありませんが、あくまでアンフォースドエラーを最小限に抑えたプレーを心がけています。フォアハンドの回り込みを多用するため、バックハンドでは相手のバックハンド側を狙う。バックハンドでスライスやドロップショットを使用する場面もそれほど見かけない。
ときには、バックハンドのフラット系ショットでアプローチをするときもあります。超攻撃的なプレーをします。自分よりストローク力の低いプレーヤーに負けないプレースタイルで堅実なプレーをする。繊細で神経質な性格のベルディヒだが、バックハンドは安定感が非常に高いです。バックハンドで非常に安定しているからこそ、フォアハンド・サーブでかなり攻められる。完全にショットに役割分担しており、ショットを使い分けています。


<違う角度から見たベルディヒのバックハンドストローク>

10. ラファエル・ナダルのバックハンド強打

ナダルのバックハンドは、強烈なスピードボールを打つ技術と、壁のように緩いボールを打ち相手の勢いを止める技術を持っています。フォアハンドと違って、それほどスピンをかけません。インパクトの位置が非常に前です。両腕が伸び切ったところで打ちます。手首もかなり伸ばし気味に打ちます。そのため、打点の範囲は広い。フォロースルーでは、身体に巻きつけます。クロスに打ちやすいフォームをしています。バックハンドのクロスが一番の武器です。ナダルはラリー中、自分のバックハンドクロスがエースになるタイミングを見計らい、クロスへの強打のタイミングをうかがいます。相手がコートの中央への戻りが遅いと、すかさずオープンコートにクロスボールを打ち込みます。相手が返球できたとしてもナダルには回り込みフォアハンドがあります。フォアハンドの強打があるから、あえてそれほど無理をしません。相手のアンフォースドエラーを誘うかのように、しつこく返し続けることもします。バックハンドのストレートに強打することもできます。バックハンドのクロスボールの返球が甘くなったとき、バックハンドでストレートを打ち込みます。ナダルのバックハンド側を狙っても、ライジングショットでカウンターすることもできます。また、ペースを落として打ったり、バックハンドスライスも多用します。

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ナダルは遠い打点が得意です。サイドに振られたときに強さを発揮します。いくら強いボールで強打しアプローチ&ネットダッシュしても、ナダルのストレートへのパッシングショットはうまいです。相手はナダルの強烈なフォアハンドを避けて、バックハンドを狙いますが、ナダルのカウンターの餌食になります。バックハンドでしっかりと左肩を入れ、ボールを引きつけるので、相手にコースを読ませません。相手が先に動くときは、ボールをひきつけます。相手が足を止めてしまったときは、ライジング気味に打ちます。同じ構えから、クロス、ストレートに強打できます。パッシングショットは、かなり速い。相手は、読みが当たっても、ナダルのスピードボールに対応できません。ミスヒットし、エラーしてしまいます。激しいスピンをかけて足元を狙うこともあります。
課題としては、高い打点は少しミスをすることもあります。調子が悪いときは、相手のボールに押されて、明らかにアウトするようなボールを打ってしまうこともあります。高い打点を振り遅れて、ストレートへの強打をサイドアウトするシーンもあります。調子が良いときには手がつけられません。ほとんどミスしません。特にブレイクポイントでは100%ミスしないのではないのかと思わせるほどです。

違う角度から見たナダルのバックハンドストローク