4. スタン・ワウリンカのバックハンド強打

ワウリンカのバックハンドストロークは強烈。下半身のパワーを活かすためにタメを十分に作って打ちます。ストローク戦で打ち負けず、相手のボールに押されるどころか、さらに重いボールを打ち返すことができます。速いテンポのラリー中でも大胆にタメを作って打ちます。他のどのプレーヤーよりもボールは重い。バックハンドでトップスピンをかけるのも得意です。相手の調子を狂わせるようなチェンジオブペースを仕掛けたり、ミスを誘ったり、ラリーのリズムを変えたりするようなショットはあまり使わず、あくまでパワーで押し切るのがワウリンカのテニスです。
クロスでもストレートでも打つときに身体を大きく開いて打つのが、ワウリンカの特徴です。クロスに打つ際には、打点をかなり前にします。フォロースルーでは、左手を大きく後ろに引いて、身体の回転を抑えるので、バランスが崩れにくいです。ストレートにカウンターを打つ際に、打つ方向にラケットを押し出すように打つのではなく、思い切って振ったスウィングの中で微妙にタイミングを遅らせて、打点を遅らせることによって、方向を打ち分けます。しっかりとラケットを振り抜くためクロスに打つようなフォームになっているので、相手はコースを読むことができず、反応できません。通常ストレートに打つ際には、スウィングはインサイドからアウトサイドへの軌道になりますが、ワウリンカはスウィングの軌道を変えずに打点を遅らせることによって、ストレートに打ちます。
ラケットスウィングと上半身の使い方のしっかりとした「型」を持っています。打点まで身体を持っていくだけ、という感じ。ストロークの打ち合いのなかで、同じスウィング、同じスウィングスピード、同じフォームで打つために、強烈なスピードがあるにも関わらず、ミスせず強打できます。カウンターのバックハンドストロークも上手い。強打をしようとラケットのスウィングスピードを速くしているにも関わらず、ラケット面が安定しています。低い打点の強打がうまい一方で、高い打点の強打が課題です。高い打点の強打のコントロールが難しいため、ワウリンカの腕力を持ってしても、後ろに下がって後方からの強打をよく使います。リターンやディフェンスをする際にスライスを多用します。フォアハンドでもスライスを使います。確実に返すときと、エースを取りに行くときとのメリハリを効かせたプレーをします。

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2015年全仏でのストロークは圧巻でした。ジョコビッチを完全に上回りました。ストロークで試合序盤はミスが出ていたものの、試合中盤から終盤にかけて威力とコントロールがともに完璧でした。あの鉄壁のディフェンスを持つジョコビッチを押し切りました。振り抜いたときのバックハンドの威力は本当に凄まじいものがあります。スマッシュを打っているかのような破壊力があります。最も得意なサーフェスはクレーコートだろう。コーチのノーマンの影響も大きい。以前はソダーリングのコーチだった。強打を教えるのがうまい。
速いテンポのライジング打ち合いなどで動きながら打つ場合に、下半身の使い方が硬いために、動きながら打つときに少しミスが出ます。止まってタメて打つのが得意な分、苦手かもしれません。課題といえば、ラリーでペースを握っているときの強打は安定していますが、自分のリズムを掴めないときでも強打ではミスをしてしまう。自分の調子を上げるためには、ある程度ラリーで打ち合いをし、打ち合いの中で、決める、というプレイスタイルである。ペースのない戦いの中でも、強打で決めることができれば、今後さらに強くなっていくだろう。フェデラーはリズムがない中でも強打できる。短期決戦で決めることができる。相手に攻めるチャンスを与えずに、決め切ることができる。ワウリンカが身につけるべき技術であろう。


<違う角度から見たワウリンカのバックハンドストローク>