5. 錦織圭のバックハンド強打

錦織圭のバックハンドはコントロール能力が抜群に高い。錦織のバックハンドのコントロール能力の高さの秘訣は、身体と腰の回転を抑え気味で打つことにある。また、リストをよく使うのも錦織の特徴である。手首をよく曲げ、インパクトにむけて、インパクト直前で一気に手首を返すようにして、スウィングスピードを加速させていく。また、錦織圭はバックハンドストロークで、ボールを合わせてラケット面を作って打つのが上手い。トップ選手なら皆、ボールに合わせる技術は高いが、錦織ほど自然体でこなせる選手はいない。フェデラーが両手バックハンドだったら、おそらくそういう打ち方をするだろう。錦織のバックハンドは安定感が抜群に高い。ラリー戦におけるバックハンドの打ち合いでは、ライジングでストレートに流しつつ、エースを取ることもできます。また、深いボールを後ろに下がりながらでも、強打できるのは錦織の技術の高さを表しています。ストレートへの強打も上手い。狙い澄ましたストレートへの強打は対戦相手が分かっていても、取れない。ベースラインの内側に入って一歩前に踏み込んで強打するから、相手はディフェンスにまわる暇がない。速いタミングがうまいから、カウンターもうまい。ライジング気味にショートクロスに打つのも得意で、パッシングでよく使います。特に、リターンはうまい。テイクバックが非常に小さく、フォロースルーを全くせず、インパクトにラケット面をセットし、ライジングでさばく。アドバンテージサイドで、バックハンド側に来たボールをストレートに強打することができます。

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バックハンドでの打ち合いでは、ジョコビッチと並ぶ技術力の高さがあります。ジョコビッチと異なるのはストレートへの強打の頻度です。錦織は、打てばエースになるときにしか打ち込みません。しっかり肩を入れて踏み込み、自分の打点に入れたときしか打たない。相手のショットにスキがあるときのみに打ちます。ジョコビッチは、相手のボールに威力があろうと、ストレートに打ち込みます。錦織は、今後、様々なシチュエーションでも、ストレートに強打できるようになるのも課題だろう。
また、今後は、さらに球速のあるボールを打つ必要があるだろう。厚い当たりで、今よりスピンをかけたスピードボールを打つ必要があります。今の試合展開よりもウィナー数を増やし、相手をベースラインの後ろに下げる必要があるだろう。錦織のバックハンドのコントロール能力の高さの秘訣は、身体と腰の回転を抑え気味で打つことにあるが、今後さらなるレベルアップを図るためには、体幹を含めて全身を使った強打をする必要がある。リストをよく使うことでスウィングスピードは上がり回転をかけられるが、ボールの重さはそれほど重くならず、相手のミスを誘うほど脅威にならない。


違う角度から見た錦織圭のバックハンドストローク強打

8. ミロシュ・ラオニッチのバックハンド強打

ミロシュ・ラオニッチのバックハンドショートクロス:相手に攻め込まれた時のカウンターショット。シングルスプレーヤーには必須のショットである。ポイントは、姿勢を低くし、低い姿勢を保ったままスイングこと。両手打ちバックハンドのショートクロスは、ラケットを振り抜かないのもポイント。ラケット面を作って、フォロースルーでラケットを止める。トップスピンをかけてショートクロスに打つ際にも、リストを使ってスピンをかけるが、フォロースルーで前に振り抜かない。ラケットを立て気味にインパクトすると、クロスに角度をつけやすい。相手の足元に落とし、相手のボレーを浮かせて、次で決めるのが狙いなので、打った後にすぐにネット方向にダッシュできる姿勢を作る。右足に体重を乗せて打つが、打った直後に、左足を外側に踏み出し、左足で地面を蹴って、次のボールへダッシュする。

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<違う角度から見たラオニッチのバックハンドストローク>

9. マリン・チリッチのバックハンド強打

チリッチのバックハンドは、一般愛好家が最も見習うべきバックハンドでしょう。高い身長から高い打点のフラット系バックハンドは非常に強烈です。基本的にどんなボールが来ても、しっかりと横向きを作って、体重を前に(右足に)乗せて打ちます。そのバックハンドには非常に威力があります。テイクバックでしっかりと右肩を入れ、すばやく横向きを作ります。体重をいったん左足(後ろ足)に乗せます。ラケットの動きがスムーズで流れるようにスウィングします。体重を前に乗せ、思い切ってスウィングして、打ち込みます。フォロースルーでしっかりと身体を回転させ、最後まで振り切ります。浅いボールに対しては、前方にステップインし、横向きのままジャンプしながら打つことも多いです。ただ、ほどんどのショットを横向きで打つため、サイドに振られたときも(オープンスタンスを使わずに)横向きで打ちますので、少し窮屈に感じることもあります。

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リターンもうまく、パッシングも安定しています。安全に行くときは、膝をしっかりっと深く曲げ、身体の回転を抑えて打ちます。ストレートへの強打もうまく、フラット系で伸びがあります。厳しいボールに対しては、スライスを用いる柔軟性もあります。フォアハンドもバックハンドも攻撃的に打ち込みます。常に相手にプレッシャーをかけ、攻撃し続けます。そのため、アンフォースドエラーを重ねてしまうシーンもあります。メンタル的に少し弱いところもあり、接線で弱腰になることもあります。バックハンドストロークのスピードはかなりありますので、アンフォースドエラーを減らすことが課題でしょう。

違う角度から見たチリッチのバックハンドストローク