1. ノバク・ジョコビッチのバックハンド強打

ジョコビッチのバックハンドは非常に安定感があり、かつ攻撃力もあります。バックハンドストロークはジョコビッチの勝負強さの秘訣です。テイクバックで右肩をしっかりと入れて身体をひねり、同じフォームからクロス、ストレート、アングルに打ちますので、相手は最後までコースを読めず、反応が遅れます。インパクトでの捉え方に特徴があり、インパクトが非常にソフトで柔らかい。しっかりとラケットでボールを捉えつつ強打します。ガットの上にしっかりとボールを乗せて打ちます。手首をこねるような動きが少なく、ラケット面の動きが非常に安定しています。インパクト前後でラケット面を狙う方向に押し出します。インパクトを点でとらえず、線でとらえる打ち方をしているため、打点が少しずれても、安定して強打できます(インパクトを点でとらえず、線でとらえるところは、ジョコビッチのフォアハンドにも共通する部分です)。ボールはインパクトの最後までしっかりと見ています。左手中心のバックハンドでシャープに振り抜きます。全体的にリラックスして打つので身体の使い方がうまく、身体の近くに来たボールを、身体を逃がしながら打ったり、遠くに来たボールを、腰を曲げながら打ったりするのも、安定感を損なわず柔軟に対応しています。

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ジョコビッチのバックハンドの更なる特徴が、高い打点です。しっかり振り抜くことができます。テイクバックでラケットを立て、高い位置にセットし、右肩を下げて構えます。インパクトで、狙った方向にラケット面を押し出すような動きが大きいので、ボールをしっかりとコントロールできます。フォアハンドのように、高い打点からアングルにスピンをかけて打つことができます。さらに、フラット系でストレートに強打することもできます。しっかりと腰が入っており、身体の回転力を使って打ちますので、ボールはよく伸びます。さらに、ナチュラルな回転がかかっているため、ライン際でボールが鋭く落ちます。コートカバーリングもうまく、相手に厳しいボールを、両足をいっぱいに開いてスライドしてボールを返球します。柔軟性の高いジョコビッチならではのショットと言えるでしょう。リターンがうまく、天才的な才能を発揮します。とにかく面を合わせるのが上手い。タイミングを合わせるのも抜群に上手い。ライジングの打ち合いにおいて、早いタイミングで打つことにも長けています。ライジング気味にアングルに打つことだって出来てしまいます。強いボールを打つことができるのに、あえて打たない、そんなシーンが多いです。相手にコートの深いところにボールを打たれても、全く動じずに、角度をつけてアングルに打ったり、ストレートへカウンターをするのは相手にとって脅威であろう。バランス感覚が非常によく、コートを走り回りボールを返球している足の使い方を見ていると、フィギュアスケートの選手が氷上をスライドするような、なめらかさを感じるときがあります。姿勢は崩れているのに身体の軸がまったくブレず、足は地面をしっかり捉えている。ストレートに強打する際、まれにボールをひきつけすぎて、サイドを割るときがあります。課題があるとすれば、リターンでの攻撃です。ジョコビッチほどの技術があれば、もっとリターンで攻撃できるはずです。今は、そうしなくても勝つことが出来るから問題ありませんが、グランドスラムでのタイトルをさらに取るためには、必要になります。


<違う角度から見たジョコビッチのバックハンドストローク>