2. ロジャー・フェデラーのバックハンド強打

フォームの美しさが光るフェデラーのバックハンドストローク。片手打ちバックハンドの一般愛好家の中には、フェデラーの打ち方を真似してみた人も多いのではないだろうか。フェデラーほど相手の逆をつき、相手にショットを読ませず、相手にリズムを作らせないストローカーはいません。フェデラーは、同じフォームから深いショット、浅いショット、ショートアングル、フラット系強打、ライジング強打、コースを打ち分けます。フェデラーは最近ではアプローチショットでバックハンドストロークのストレートを使ってきます。バックハンドストロークを攻撃的なショットとして使うようになっていますが、以前は長年ずっとバックハンドが課題とされていました。それでもフェデラーは勝つことができていました。バックハンドを直す必要がなかったのかもしれません。スライスでいなすテクニックは以前からありましたが、ストレートにカウンターで強打するようなことはありませんでした。そうしなければ、ならないほどフェデラーは追い込まれているということでしょう。今でも進化は続けています。

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テイクバックが非常にコンパクトです。フォアハンド同様ラケットをあまり引きません。テイクバックで少しラケット面が上を向き、身体の近いところでセットします。インパクトにおける手首とラケットの形を、テイクバックでラケットを引いたときに作ります。そのまま手首の形を作ったまま一気に前方にラケットを振り出します。相手のボールが自分の打点に入るまでの時間感覚がすごく優れているのでしょう。インパクトにむけてタイミングを合わせるのが上手いです。インパクトのタイミングに合わせて、ラケットを打点まで持っていき、左手を後ろに引きながら、打点をかなり前で、体重を前に乗せて打ちますので、ボールに負けず、相手のスピードボールを利用して、最小限の動きで最大限の効率よく打ち返す。ストレートに打つときは、インサイドからアウトサイドにスウィングしますので、テイクバックで右手が胸に触れそうなほど、身体に巻きつけます。バックハンドストロークで時折見せるストレートへのフラット系ショットは芸術的です。調子が良いときは、入りますが、このショットが入らなかったために、逆転されるケースもあります。オープンスタンスで打つことはあまりありませんが、スローズスタンスで前方にステップインして強打します。アングルへのスピン系強打は強烈です。相手は一瞬ネットかと思うくらいネットの近いところを通してアングルへ強打するので、相手は反応できません。身体の回転を活かして打ちますし、早いタイミングで打ち合うことができます。超速サーブを片手バックハンドでリターンで合わせます。リターンエースを取るのを何度も見たこともあります。バックハンドスライスリターンも得意です。少し前まではバックハンドスライスのドロップリターンを使うこともあったが、2015年はあまり見られませんでした。相手の強打をかわすバックハンドスライスショット、コートカバーリングが優れているのはバックハンドスライスが大きい。高い打点、低い打点、速い打点、すべて返球することができます。しかし、相手にミスをさせたり、相手からエースをうばうことができませんので、使用するタイミングが重要です。
近年ではバックハンドスライスが狙われて、強打されることもあります。対ジョコビッチ戦、対ナダル戦では、いずれもバックハンドスライスを狙われています。ジョコビッチ戦ではクロスへのバックハンドスライスを、ストレートへバックハンドフラット系ショットで決められることもあります。対ナダルでは、スライスのアプローチがことごとくパッシングされてしまいます。クロスに打ったスライスをストレートに強打されるシーンが目立ちますが、それに対抗して、フォアハンドのランニングショットでカウンターをする戦術を持つこともあります。ただ、ジョコビッチ戦やナダル戦では、そのカウンターをさらに厳しい強打を返されることもあります。ラリー戦で優位に立つシーンが少なくなってきています。


<違う角度から見たフェデラーのバックハンドストローク>
<2方向から見た(前からと左から)フェデラーのバックハンドストローク>